02.07.00:55
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10.03.00:17
この夏の話である。
沖さんは、 終電間近の駅へ急いでいた。 駅への近道は、 真っ暗な路地。 終電のことを考えると、 そこを通り抜けるしかなかった。 足早に歩く彼女の足音が響く。 ふと気がつくと、 足音が増えている。 振り返ると、 スーツを着た男性が歩いてくるのが見えた。 街灯の下を通る彼は、 ナイフか包丁のようなものを握りしめていた。 とっさにかけだした。 それでも足音は、 一定の間隔を保ってついてくる。 必死で逃げて、 あるビルの非常階段を駆け上がった。 足音がついてくる。 幸運にも、屋上の扉の鍵は開いていた。 屋上に飛び出し、 反対側の端まで走った。 フェンスがない。 包丁を持った男は、 一直線に彼女の方にやってくる。 (殺される) 彼女が思った瞬間、 男はその屋上から飛び降りた。 下を見ると、 頭を血の海に横たえた死体があった。 結局事情聴取などで、 終電どころか警察に留まることになった。 警察では話さなかったが、 今でも忘れないことがある。 飛び降りる瞬間の彼の言葉、 「次は君だよ」 彼女は、 すれ違いざまに手渡された携帯を持っている。 捨ててもいつの間にか家に置いてある、 不思議な携帯である。 昨夜、 電話が鳴ったそうだ。 今日、 彼女に連絡が取れない。 … PR
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